刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第30章 ある日の出来事 4
近侍は確か石切丸だったはずだ。
彼女の部屋に近付く事は、短刀ならすぐ気付かれるが石切丸なら…と邪な考えが浮かんだ。
そう思ったら居ても立ってもいられなくなった。
起き上がり、音を立てずに部屋を出ようと障子に手をかけた時
「伽羅坊…」
「…ッ!」
突然聞こえた声に、がらにもなく肩がびくりと跳ねた。
振り返ると国永がにやりと目を細めていた。いつの間に起きたんだ…それに光忠と貞まで起きている。
しかも俺がどこに行こうとしているのかも分かっているようだ。この面倒極まりない状況に思わず溜め息が出た。
今更床に戻る訳にも行かず、なんとも気まずい。
「…」
「伽羅坊…、ついにか…頑張ってこい!!」
「伽羅ちゃん、お水も持っていったらいいよ、厨の冷蔵庫にペットボトルのお水が入ってるからね」
「伽羅、タオルとティッシュも持っていったら後々役に立つぜ?」
「………」
勘違いをされている。
こんな深夜に恋仲の相手のところに行こうとしているんだ。そう思われても仕方がないのかもしれないが、すぐ隣の部屋に近侍がいる状況で事に及ぶ訳がないだろう…。