刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第17章 ある日の出来事 3
自然と足が動いて、気が付いたらこいつの横に座っていた。
こいつが俺に気付き、じゃれるのをやめた隙に山姥切がそそくさと離れ去っていく。
「大倶利伽羅さん、私お裁縫が得意じゃなくて。国広くんのもそれはもう酷い出来でですね……それに私が手を加えると、手入れしてもその部分は直らないんですよ?ずっと残るんです…そ、それでも…やりますか?手入れした方が早いし元通りになりますけれど…」
「構わない」
「…っ、そ、そうですか…わかりました」
手入れで直ってもらっては困る。あんたが縫ってくれた跡はずっと残しておきたい。それがどんなに醜かろうが関係なかった。
俺の心中を察したのか、少し照れくさそうにしたこいつが「本当に下手くそですからね?」と小さい声で呟いた後、赤い糸を手に取る。
…あんたとこうして二人になるのは久々だな。
「あんまり見られると、その…緊張してしまいます」
「…」
俺はいつの間にかこいつを見つめていたのか?
本当にどうしようもないな俺は…
暫くしてパチンとハサミの音がして、縫い終わったのかこいつが腰布を渡してきた。
「ど、どうぞ、」
「あぁ」
出来上がった縫い目を見ると、なんとも不格好に仕上がっている。
「すみません…」
「…くっ」
「わ、笑わなくてもいいじゃないですか!」
「わるい、想像を越えていた」
「酷い~!だから下手って言いました!」
そう言いながら、恥ずかしそうにしているこいつが堪らなく愛しかった。
大倶利伽羅side、終