刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第49章 刀剣男士の苦悩と決断
鋭い刃を向けられた影は呻き後退り、その場から逃げようと審神者の部屋をゆらりと出て行く。逃がすまいと、背後から振り下ろした刀の切っ先が影を掠めた。
黒い影は揺らめきながら輪郭を娘の姿へと変え、その背後で禍々しい黒煙が蠢いている。
「痛い……お願い、やめて下さい……どうしてこんな酷いこと………大倶利伽羅様…」
「黙れ」
刀を構える腕に怒りが宿り、眠る審神者がいる私室を庇うように大倶利伽羅の背に夜風が走る。
暫く睨み合った後、影が咆哮し黒い手が伸び襲いかかる。その刹那、大倶利伽羅は一歩踏み込み紫電のような斬撃を走らせた。
「あああああ…………!!あと少し、あと少しだったのに……無念じゃ……無念じゃぁぁぁ……――」
次の瞬間、過去に包丁に取り込まれた人間の霊魂だろうか…様々な声と顔が幾重にも現れては消え、その中に歪んだ娘の泣き顔が一瞬だけ見えた。
そして断末魔とともに包丁の怨霊が霧散していき、娘は意識を失くしたのか、どさりとそこに倒れた。その傍らには包丁が転がっている。
大倶利伽羅はそっとその包丁を手に取ってみたが、それは既に何の変哲もないただの包丁に過ぎなかった。