刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第49章 刀剣男士の苦悩と決断
包丁は、あの女の「俺への想い」を増幅させ、あいつの嫉妬や負の感情を力としている。
姿を現さないのは、まだあいつの心の隙がないから。だがその隙がなくとも怨霊の力が増幅した場合は…?
増幅させる負の感情、それは必ずしも「あいつの想い」である必要はないのではないか。
あの女の嫉妬でも、あの女の執着でも、包丁を引きずり出す“負”であるなら――
一か八かだ。もう躊躇している時間はない。そう思い俺はあいつを探した。
――どこだ
鍛刀場にはいない。広間にも、厨にも、書庫にも姿はない。短刀たちに声を掛けても「見てないよ」と、揃って首を振るばかりだ。
回廊をひとつ、またひとつと曲がりながら探し続け、気づけば馬小屋へ向かう道を歩いていた。風に乗って藁の匂いが鼻をかすめる。
その瞬間、小屋の扉がひらりと揺れた。
――そして、彼女がゆっくりと姿を現す。
肩や袖には小さな藁くず。どこか疲れ切ったようで、それでいて考え込んでいるような表情だった。あいつは俺に気づかないまま小さく息を吐き、空を仰いだ。
その横顔があまりにも寂しげで――胸の奥がじくりと痛む。
距離を保ったまま視線だけで追っていると、彼女はそのまま資材庫へと入っていった。