刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第49章 刀剣男士の苦悩と決断
あいつは弱さを見せない。皆に心配をかけまいとして、笑顔さえ作ってみせる。
――俺の前だけは弱さを見せていたのに
あいつを守るためとはいえ、一緒にいたくもないあの女と行動を共にする日々。これが最善だと、己に言い聞かせなければ剣を握る理由さえ失いそうになる。
「大倶利伽羅様〜」
甘ったるい声が背後から絡みつく。反射的に込み上げる殺意を理性で押さえ込み、俺は刀を強く握り締めた。
その時、女が不意に背伸びをし俺の口元へと顔を寄せてくる。避ける――そう判断するより早く、視界の端にあいつの姿が映った。
物陰から息を潜め、こちらをじっと見ている。
逃げ場のない距離。
言い訳も弁明も届かない位置。
――『君が彼女に心を寄せているように見せろ』
青江の言葉が冷たく脳裏に蘇る。
俺は選ぶしかなかった。女の顎を掴み上げ、あいつからは見えない角度にその顔を引き寄せた。
ほんの一瞬――それだけで充分だった。あいつの表情が凍りつく。理解し、拒絶し、それでも目を逸らすことすらできない――そんな絶望がありありと浮かんでいた。
しているように……見えたのだろう。そう見せるために俺が選んだ行動だ。だが、その瞬間……あいつの中で俺は確実に「裏切った」のだと悟った。