刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第48章 忍び寄る魔の手
手を止めさせてまで無理に話をしなくても、後で話をすれば…
あの日は精神的に不安定なだけだったのかも知れない。暫くそっとしておいたら気持ちも落ち着いて、次は本音を語ってくれるかも…そう思い、話を切り出せずに数日が経過した。
今思えば…それがそもそも間違っていたのかも知れない。
「大俱利伽羅さまぁ~お隣失礼しまぁす!」
朝餉の時に聞いたシーちゃんの猫撫で声。
声のする方を見ると、シーちゃんが笑顔で大倶利伽羅さんの隣を陣取っていた。周りにいる刀剣達もぎょっとしたような表情を浮かべているが、シーちゃんは構うことなく大倶利伽羅さんに話しかけている。
その様子はさながら恋人に接するそれのようで…驚きすぎて私も見入ってしまった。
当の大倶利伽羅さんは通常運転…より遥かに機嫌が悪そう。ここまで聞こえては来ないが、舌打ちをしているのが分かる。
「何あれ…どういうことです?」
胸がざわざわして口に入っている鮭の味もわからないほど困惑していると、隣に座ってきた鯰尾くんが耳打ちしてきた。
「う、うん…?ど、どういうつもりなのかなぁ…」
「滞在延長って、まさか大倶利伽羅にアプローチするためじゃないよね?」