刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第48章 忍び寄る魔の手
腕を伸ばして大倶利伽羅さんに縋り付きながら口にすると、私の首筋に顔を埋めてきた大倶利伽羅さんが何かに耐えるようにフーッと大きく息を吐いた。
そして大倶利伽羅さんはこれまでの執拗さを忘れたようにバッと体を離して起き上がった。
「今の言葉、忘れるなよ」
「っ…」
「……おやすみ」
大倶利伽羅さんが部屋から出ていった後、我ながらとんでもなく恥ずかしいことを言ってしまった…と少しだけ後悔しても遅かった。
…
…
あの後、大倶利伽羅さんが部屋から出ていった後、お酒の力もあり割とすぐに睡魔に襲われた。
このまま朝までぐっすり眠れそう、と思いながら眠りについたのに、何故か寝苦しくて目が覚めた。時計を見ると、丑三つ時だった。今は秋、もう少しで冬が来るというのに異様に部屋が暑くてむわっとしている。
いつもは夜闇で冷やされた空気と同じ温度の布団が冷たくて、人肌…大倶利伽羅さんが恋しくなるのだけど、今は大袈裟に言うと熱帯夜のような、そんなまとわりつくような淀んだ空気が充満している。
「何でこんなに暑いんだろう…?」
まだ体にお酒が残っているのか倦怠感がある。少し気分が悪くて外の風に当たろうと、私室を出て執務室を通り抜けて縁側に出ると、部屋とは打って変わってひんやりとした空気が肌を掠めた。