刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第48章 忍び寄る魔の手
厨で包丁がって言いかけたところで、皆の視線が私に向けられる。各々好きなお酒を手に美味しい手作りのおつまみを時折頬張りながら、この時間を存分に楽しんでいる刀剣達を見て私は咄嗟に口を噤んだ。
「…っ、」
「ん?さっき何か言いかけてなかったかい?」
「…ううん、何でもないのっ。それより次郎ちゃんは飲んでる?」
「見ての通りさ!今日は思いっきり楽しむつもりだよ!」
今日は皆揃ってシーちゃんと飲める最後の日…せっかくの楽しい雰囲気を壊してはいけない、そう思った私は咄嗟に笑顔を取り繕った。
包丁の事は伏せることにしよう。考えて見れば誰かが似たような包丁を買ってきただけで、私が手に取ったあの包丁じゃないかも知れない。
今思えば怖いって気持ちが先走っちゃってちゃんとよく見たわけでもなかった。悪寒もきっと気持ちの問題だ…
それに、例え同じ包丁だったとしても何か問題があるわけではない。いくらなんでもいわくつきの包丁なんて販売してるわけないし、…万が一何かあったとしてもこんなに大勢の付喪神がいるこの本丸だ、誰かしら必ず気付くはず。
だから、ここにいる限り安全だし怖いことなんて何もないんだ。
「次郎ちゃん!今日は私も頑張っちゃう!じゃんじゃん飲も飲も!」
「アッハハハ!誰かさんに怒られても知らないよぉ~?」
「大丈夫大丈夫!」
余計なことを考えるのはよそう、そう思い私はその場の雰囲気を楽しんだ。