刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第48章 忍び寄る魔の手
シーちゃんを見たけど、花瓶を手に夢中で話をする歌仙に相槌を打っていて、二人とも今の声に気付いていなさそうな様子。
暫く耳を澄ましていたけれど先ほどの声はもう聴こえなくて、やっぱり気のせいかな…とその場を離れようとしたら、何かが服に引っかかったのか違和感を覚えた。
「…え?」
見ると、長方形の木箱のささくれ立っている所に服の裾が引っ掛かり、ぶら下がっている。
今にも落ちそうになっている木箱を慌てて手に取り、引っ掛かっている箇所をそっと外す。そしてそれを元の場所に戻そうとしたものの…何故かその木箱が妙に気になって箱を開けると、そこには年季が入った包丁が納められていた。
「…痛…ッ!」
「主!何やってるんだ!」
歌仙の声にハッとして手元を見ると、何故か箱から出した覚えのない包丁を手に持っていることに驚く。
駆け寄る歌仙に「よくわからないけど包丁で手を切っちゃったみたい」と言うと、歌仙は私が持っている包丁を素早く箱に戻した後、そのまま私の手を取って自分の口に持っていき指先をパクリと咥えた。
「え、ちょっ…」
大倶利伽羅さん以外にこんなことをされたことがなかったので、驚いて手を引っ込めてしまうと、歌仙も我に返ったようで「すまない」と言いながらバツの悪そうな表情で私から距離を取った。