刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第47章 一人の少女
「……祖父母に引き取られてからは本当に幸せでした。なのに、なのに………お店継ぐことでやっと恩返し出来ると思っていたのに…」
「…」
「なのに、な、んで……」
「…わかるよ………辛い、よね…」
そう声を掛けると彼女はわからない、と声を荒らげた。
「審神者様みたいに恵まれてる人には私の気持ちなんて到底わからないっ…!あんな綺麗な男士に囲まれて、当たり前のように守ってもらえて、何の苦労もしてなさそうな審神者様なんかに!」
涙を流しながらそう言い放った後、彼女は一瞬ハッとしたような顔をしてから押し黙った。そして少しだけ沈黙が続いたあとポツリと言葉を零す。
「……ごめ、んなさい…私……酷い事……」
「ううん……大丈夫だよ。気にしないで……」
複雑な家庭環境で育ち、唯一の家族だった人を突然殺された彼女の悲しみは計り知れない。
それに比べて私なんか…両親を不慮の事故で亡くしたとはいえ、それ以外は本当に恵まれている。戦争中とはいえ、優しい皆に守られて大事にされて、毎日なんの不自由もなく温かくて美味しいご飯を食べて、温かい布団で眠って。
叶わないと思っていた恋も叶って、あの大倶利伽羅さんに好きだって言ってもらえて、これ以上ないくらいに幸せだと実感している。