刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第47章 一人の少女
あんなに綺麗に並べられていたケーキや和菓子も今は見る影もない。それどころかあの焼き菓子特有の甘い幸せな匂いも微塵も感じられなく、砂埃と色々な物が焼けたような異臭が辺りを充満している。
先程とは余りにも、すっかり変わってしまった風景が信じられない。彼女たちは、生きているのだろうか…心臓が痛いくらいに煩く脈打って、体が震えて力が入らない。
最悪の状況が頭に過ぎり立ち竦んでしまっていると、大倶利伽羅さんは「人の気配がする」と言った。
どうやら瓦礫の山の向こうで気配がするらしい。
「もしかしたら皆なんとか生き延びているのかも知れない。だったら、助けなきゃ……」
おぼつかない足取りで瓦礫をよじ登ろうとしたら「待て」という大倶利伽羅さんの声がした。
振り返ると、大倶利伽羅さんは眉を寄せ、真剣な表情で辺りを見渡している。そして暫し目を瞑り神経を尖らせて周りの様子を伺っているように見えた。
ゆっくり目を開けた大倶利伽羅さんは私に向き直る。
「敵の気配が感じられない今なら助けられる。いいか、俺が戻るまで絶対にここを動くな。念の為結界を張っておけ。わかったな?」
「わかった…!」