刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第47章 一人の少女
なんだかんだといつもお願いを聞いてくれる大倶利伽羅さん。思わず彼の腕に抱き着いて喜びを表現すると、溜息を吐かれた。
そんな態度を取られても絡みついた腕を振りほどかれない事が嬉しくて、へへ…とだらしのない笑みを浮かべながらまずは酒屋さんへと足を向かわせる。
「あ、これなんか次郎ちゃんにどうかな?ね、伽羅ちゃん」
「あいつは酒なら何でもいいと思うがな」
「あはは、それもそうかぁ」
いつも呑んでる銘柄と、少し変わったお酒、そしておつまみを選んでいると、いつの間にか少し離れたコーナーで、大倶利伽羅さんが可愛らしいラベルのお酒を両手に持って何か考え事をしている様子。
そっと近付いて見てみると、左手に桃のお酒、右手に巨峰のお酒を持ち、それを交互にみつめたあと、逡巡するように棚にある梅のお酒にも目をやっている。
明らかにどれにしようか迷っている様子に、そういうお酒も好きだったの?と驚きながら彼に近付いた。
「伽羅ちゃんどうしたの?迷ってるの?」
「…」
「それにしても…伽羅ちゃんがそんな甘いお酒も好きだったなんて意外!知らなかったなぁ」
そう言いながら彼が持っているお酒を覗き込むと、大倶利伽羅さんは特に表情を変えることもなくボソリと呟く。