刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第46章 政府の監査
ああ、なるほど…ここは母屋とはかなり離れた場所で人気(ひとけ)が無い。だから私が何か良からぬ事をしようとしていると思われたらしい。全く信用されていないんだなと呆れて溜め息が出た。
「主と本丸の結界に異常は無いか見て回っているだけだが、それが何か問題でもあるのか?」
誤解だと口を開きかけた時、国広くんが少しトゲのある口調で問いかける。
すると年配は険しい表情を和らげて、そうか…と呟いた。
「疑って悪かった」
「仕事なのは分かるが、偏見ばかり持たれるのも気分が悪い」
「……確かに。だが、疑いを持って調べなければ分からないこともある。……随分と昔のことだが…調査をした本丸で虐待している刀をこういう辺鄙なところに隠されたことがあった」
「……え、そんなことが……」
「そうだ。無論折れた刀も一緒にな…あの時俺が気付いてやれば、と今でも悔やんでも悔やみきれん。あの過ちを繰り返さないためにも念には念を入れている。助けられる命があるかもしれないからな。…まあ、この本丸はやましい事には縁がなさそうだが…」
助けられる命──
刀剣達の事を道具だとか鉄の塊だとか言っていたはずの年配が、助けられる命と言ったことが意外で目を見開くと、怪訝な顔をされた。