刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第45章 大倶利伽羅の憂鬱
薄緑色の鮮やかな餡のそれは、光忠がこだわって作る俺の好きなずんだに間違いない。
最初から俺が来ることを分かっていたのか…?
「………お節介め」
「えー?なんか言ったかい?」
「別に」
にこにこ笑う光忠がずんだ餅を手に取り俺に差し出す。
俺は、何も言わず受け取り口に放り込んだ。口に広がる枝豆の味は、甘さが絶妙で…やはりとてもうまかった。
…
…
「また俺の負けかよ~!」
「貞ちゃん、ごめんね」
「あーーー!もう一回だ!なんで一回も勝てねえんだ!?」
「何回やっても同じだと思うぞ貞坊」
「まさか鶴さん…イカサマか?」
「そんな訳あるか!」
「冗談だって!よっしゃ!仕切り直して、って言いたいところだったけど……伽羅、迎えが来たようだぜ~」
「…」
「あ、本当だ。主ちゃんが来てるね」
「忘れ去られてなくて良かったな伽羅坊!」
足音を忍ばせて気配が近付いてきているのは大分前からわかっていた。あいつなりに密やかに近寄ってきているようだが、己が主、ましてや恋仲の彼女の気配に気付かないほど鈍らではない。
部屋の前まで来ると、何故かすぐには声を掛けずに部屋の前でうろうろしている影。