刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第42章 神酒 ―番外編―
すると、こいつはへにゃりとはにかむように笑った。
「あのね…伽羅ちゃんとお揃い、恥ずかしいんだけど、…それ以上に嬉しかったりする…」
「!!」
予想外の言葉に驚き、彼女の背中を洗っていた手が止まる。
てっきり、恥ずかしいから嫌、とか…否定されるような言葉が続くのかと思っていた。
彼女の言葉に咄嗟に言葉を返せず、どくんどくんと勝手に心臓が高鳴る。
黙っている俺に不安を覚えたのか、彼女がおずおずと鏡越しに俺の顔を覗き込んできた。少し気まずくてふい、と顔を背ける。
「伽羅ちゃん?」
「…」
「…あ…もし、かして…照れてる…?」
頬が…熱いのは自覚していた。
自覚していたが…指摘されると面白くない。
「伽羅ちゃんが…照れてる…」
「っ、うるさい……また襲われたいのか」
「えっ、流石に、もう無理っ!」
するりと泡がついたままの手で彼女の太腿を撫でると、慌てふためく様子が伺える。
「ふん………立てないあんたを襲うほど鬼ではない」
「そっ、そうだよね!…あーびっくりした…」
「今は…な」
あからさまに安堵する彼女に少しムッとし、わざと最後に呟いた言葉は彼女の耳には届かなかったようで、流れていく泡と共にかき消されていった。