【進撃の巨人/リヴァイ生誕祭】To my darling
第2章 Happy moment in holy night.
少し外れたところに立っているその教会は、建物自体はまだそんなに傷んでいない。
むしろ小綺麗な印象で、小さいながらもいい感じだった。
なのに使われていないのは恐らく、建っている場所が原因だろう。
住宅街からは距離がある上、この周りには建物一つない。
そのおかげでリアは好きにピアノを弾けるのだから、建てた人はともかくリアにとっては都合が良かった。
ギィー…
正面にある、少し軋む大きな扉を開けて中に入る。
そこは普通の教会のような祭壇などがあるわけではなく、大きいホールが広がっていて、中央にグランドピアノがでんと置いてある。
その風変わりな内装も使わなくなった要因かもしれない。
特に教会と言えばピアノではなくオルガンだろう。
しかし正面に大きなステンドグラスがあるのは同じで、そこから月明かりが差し込みホール内を幻想的な雰囲気に仕上げていた。
1ヶ月ほど前、リアが自分で調律したばかりなのでピアノの音に狂いはない。
「スー…ふぅ」
ピアノの前に座り、深呼吸をして心を落ち着かせる。
そっと蓋を開け鍵盤の上に手を置けば、あとは弾くだけだ。
…♪~
この曲は少し切ないようなメロディーなのに、何故か暖かく懐かしい感じがする。
同時に、無性に泣きたくなってもくるのだった。
美しいその音色は、静かな辺りに響き渡った──