【進撃の巨人/リヴァイ生誕祭】To my darling
第2章 Happy moment in holy night.
憂鬱な気分のまま、リヴァイは歩き出した。
明日にこの疲労が響かないか心配する。
平和であることは、あの時代を知っているだけにその大切さが身に染みてわかるが、その分体を使う機会も少ないということで。
リヴァイは今も体は鍛えているけれど、どうしても昔ほどとはいかない。
以前は三十路すぎても飛び回っていたのに、今世は今日28歳になったばかりで明日の体の心配をしている。
平和なことだけを喜ぶべきか、衰えを嘆くべきか。
そんなくだらないことを考え、思わず自嘲しながら歩いていたその時だった。
ふと、どこからかピアノの音が聞こえた気がして立ち止まる。
昔のなごりで、以前ほどとはいかなくてもリヴァイは人より身体能力が優れていた。
だからその音が聞こえたのはきっと――
周りにはたくさん人が歩いていたが、リヴァイだけなのだろう。
それは、まるで運命のように。
音に集中して聞き取ろうと意識を向けると、かすかだが先ほどよりは鮮明に音が聞こえた。
「―…っ!」
そしてその音色、曲を聞いた瞬間。
リヴァイは幻聴を聞いたのかと、自分の耳を疑った。
願望を音にしているのではないのか、と。
しかしその音の出所を探って少し歩いていくと、それが幻聴なんかではないことが分かった。
この音を辿った先にリアがいる。
リヴァイはそう確信して、進む足を速めた。