第4章 甘い甘い金平糖
「成程。
…俄に納得し難い話ではあるがな」
アリたちの話…金平糖らしき物をひと舐めし、その後人間に踏まれかけた…と、思った瞬間。
気付けばこの様な姿になっていたのだ、と語る二人の話を聞き終わり。
光秀は改めて二人の姿をまじまじと見た。
服装に髪型、声。
更には腰に刺している獲物まであの二人そのままだ――
だが、家康アリが浮かべるおどおどとした表情。
そしてその手をぎゅっと握ったままの三成アリ…
考えに耽っている光秀の背後から、気忙しく走る二人分の足音が聞こえてくる。
「光秀さん!こんな所に…は!?」
「光秀様、お探ししておりました…おや、これは」
「さっきの、人間だ!」
「俺達を踏みかけたヤツらだ!」
光秀の眼前に、またおよそ信じられない様な光景が広がる。
方や、家康と三成が仲睦まじく手を取り合い。
方やそれを見て顔を顰める家康と、何処か羨ましそうにも見える表情を浮かべる三成…
先程までは面白がっていた、流石の光秀も、困惑に眉根を寄せたその瞬間。
ぽん、という音と煙を立て、家康アリと三成アリが姿を消した。
「けほっ…あ、あいつらはっ…!?」
「忽然と姿を消しましたね…奇っ怪な事もあるものです」
「お前達も、あいつらを倣って少しは仲良くやるといい」
煙が晴れた頃、光秀が地面に目をやると。
二匹のアリが、草陰からこちらを見ている、ように見えた――