第4章 甘い甘い金平糖
「なんだ.....コレ....!?」
呼ばれて甘い餌を平らげたあと、別の穴から這い出てすぐ、地面が遠くなった。
良く見なくても二足直立してるし、人間色の足が二本、顔の下から生えてやがる。人間風に言うなら『腕』とか『手』とか言うやつか。
「.....にんげ...っ」
....痛ぇ..。
自分の口を噛み切るなんて初めてだ....。
鉄くささに辟易して川縁まで歩いたが、まぁ、早え早え。
ちまちま這いずるより、こっちのほうがいいや。
そんなことを考えながら川面を覗き込んで、またビックリした。
「..な......な...っ」
立派な前歯が二本、口を閉じても飛び出してやがった。これじゃネズ公じゃねえか....
不細工な顔をほっかむりで隠す。
こんなんじゃ、ロクに生活なんか....
グゥゥゥ......ッ
「.......腹へったな....」
ネズミ顔の元アリは、道祖神に備えてあった饅頭を頬張った。しかしそれしき腹が満ちることはなく、生きるために人様の物を、こそっと頂くことにした。
こそっと、泥をすする思いで窃盗を重ね、城下ではちょっとした有名人になった。
こそ泥、ネズミ男の誕生である。
稀代の義賊、ネズミ小僧の祖となったとかならないとか.....(嘘)