第4章 甘い甘い金平糖
険しい表情を浮かべた信長が、足音も猛々しく真っ先に広間を後にする。
それを見送り、緊迫した雰囲気から解放された武将達は、漸くほっと息をついた。
その中で一人、信長に負けず劣らず、眉間に皺を寄せたままの秀吉が口を開く――
「賊が入ったとあっては、俺達家臣団の恥…策を練り、徒党を組み、必ずや賊を捕らえるぞ!三成!」
「はい、秀吉様…でも、どの様な賊かも分からなければ、策の立てようがありませんね」
三成の言葉に、ぐっと秀吉が押し黙る。
それを見た家康が深くため息をつくと、立ち上がった。
非難の目を向ける秀吉に臆することもなく、冷やかな視線を返す。
「…はぁ、付き合ってられませんね。盗まれたのは金平糖でしょう?そんな賊、たかが知れてる」
「しかし、家康。その賊とやらを引っ捕えるまで、御館様は納得せんだろうな」
光秀の苦笑混じりの言葉に、今度は家康が押し黙る番だった。
渋々と言った表情でまた腰を下ろすと、代わりに政宗が立ち上がる――
「政宗、お前まで…」
「俺は俺でちゃんと探すさ。こんな暇つぶしの機会は滅多にねぇからな」
政宗の言葉に、妙な自信めいた物を感じ。
秀吉が黙って見送るのに、皆が倣う。
にやりと笑みを湛えたまま、政宗は一人、広間から下りていく――