第8章 鹿とたんぽぽと、デートとご褒美と
いつも通りのルーティーンで掃除洗濯…
ひがな一日家の中にいるのだから、どれだけ丁寧に家事をこなしていても時間は確実に余ってくる。
本当に、いつも通りの何も変わらない一日。
に、なると思っていた。
トントン。
滅多に聞くことのないドアのノック音。
心臓が跳ねる。
そっと玄関に近付く。
トントントン。
一音増えたノックに急かされるように、私はドアノブを回した。
『は、はい。どなた様でしょうか…』
「こんにちは」
深く被られたフード。顔は見えない。しかし声や身長から見るに男性で間違いないだろう。
『あ、いまこの家の主人が留守をしていまして。私は留守番の者でして…』
「知ってるよ。カカシとサスケがいないの分かってて来たかね。
さぁ出掛けようか!」
『…え、えぇ!?』
私は掴まれそうになる腕から、瞬間的に逃れる。
「ちょ、っと待った」はぁ
あれよあれよという間に、知らない人がもう一人増えた。
こっちの人は顔も隠していなければ、怪しさはかけらもなかった。
年は若そうで。サスケと同じくらいだろうか…。
新しくやってきた青年が、フードの男の腕を掴む。
「めんどくせーけど、この人を外に連れ出してもらっちゃ困るんだよ。こっちの仕事の都合で、申し訳ねェけどな」
そのセリフを聞いてピンと来る。
なるほど、この人はカカシが用意していった見張り役の忍だ。
では…一体、こっちのフードの男は…?
「…アンタ、何もんだよ。返答によっちゃ…」
見張りの青年が、フード男の腕を掴んだまま語り掛ける。