第8章 鹿とたんぽぽと、デートとご褒美と
「一睡も出来なかった。って、顔してるなサスケ」
「…一睡も出来なかったからな」
「あんな役得、お前には荷が重過ぎたんだよ。
ま!ほらあれだ…役者不足」はは
「…」自分が選ばれなかったから八つ当たりか
『ん?何の話ですか?
はいどうぞ。お味噌汁、まだ熱いんで気を付けて下さいね」
私は台所から朝ご飯を運んできて、手早く食卓に並べる。
「なーんもないよ!いただきます」
「…いただきます」
軽く洗い物を済ませて自分も席に着く。そして何気なくカカシの方を見やると、彼はいつも既に食事を終えている。
『では私も…。いただきます。
はたけさん?…いつも思いますけど、そんなに早く食べてしまったら体に良くないですよ』
私は味噌汁をすすった後に呟く。
「忍はね、どうしても早食いになっちゃうもんなんだよ」
職業病というやつだろうか。
チラリとサスケの方に視線を向けると、彼は依然として食事を続けている。まだ半分近く残っていた。
「…カカシが特殊なだけだ」
一緒にするな。と言わんばかりの表情だった。
「じゃぁ行ってくるから。申し訳ないけど あと少ししたら、見張りの人が来ちゃうからね。
今日だけは、まだ一人での外出は控えて」
この説明は、昨日も聞いていた。
私の見張り役は、任務として人材を発注している為、急なキャンセルがきかない。従って、本日分の見張りはこの後来てしまうのだ。
私が一人で出掛けられるのは、明日かららしい。
『分かってますよ。大丈夫です。
二人とも、気を付けて行ってらっしゃい』
「うん。行ってきます」
「行ってきます…」
いつも通りに二人を見送る。玄関の扉が閉まると私は彼等に向けて振っていた手を下ろした。