第8章 鹿とたんぽぽと、デートとご褒美と
——point of view 奈良シカマル
この任務は俺にとって、最高の任務だ。
面倒くさいのはノーサンキュー。やりがいだとか、戦闘だとかも全部まとめてノーサンキュー。
その点今のお仕事は楽チンだ。ただぼーっと ひとつの扉見張ってりゃいいんだから。
「…あー、今日も良い天気だ…」
俺は大木の太い幹に、全体重を預けて伸びをする。
カカシから この任務を受けた忍達は、一体どういう意図で見張りをさせているのかって 勘ぐる奴が多いみたいだが。俺の場合は…
「興味、ねー」
こうやってダラダラしながら、たまに双眼鏡覗いて。のんびり時間が過ぎて行く。
この至福の時間さえ邪魔されなけりゃ、部屋の中に極悪人がいたって、金銀財宝が眠っていたって。本当にどうでもいい。
俺はあくびをしながら、双眼鏡で辺りを探る。
まぁ念の為だ。
過去の任務報告書によれば、家の中から人が出て来たことも、外から誰かが中に入った事も。
想定外の事は一度たりとも起きていないのだ。
頼むから、俺が当番のときに限ってイレギュラー起きる事だけは勘弁してくれよな…
「って、おいおいおい…」
目標の家に急接近する人影あり。
すぐさま体を起こして態勢を整える。より目を凝らして再度双眼鏡を覗いた。
その人影は
フード付きのロングマントで、ここからでは人物の細かい特徴は把握不可能…。
俺は…圧倒的に運が悪い部類の人間だ。
「はぁ…もう勘弁してくれよ…
あーまったくもって、めんどくせぇー…」