第7章 スキンシップと、年下と指先と
彼の、漆のような黒い髪を撫で付ける。
その細い髪を掬い上げると、私の指先をいくつかの束になってはらはらと滑り落ちる。
その感触は、心地良い物であった。
そういえば、過去男性の頭をこんなにも長い時間撫で続けた経験はないな。
なんて、そんな事を考える余裕も出て来た。
ふと、カカシの言葉を思い出す。
——サスケじゃなくて俺でも良いと思わない?
たしかに、そうなのだ。二人はこの世界に来てから出会えた、大切な人達。
その大切さに差異などあるはずはない。
その、はずなのに…どうして私はサスケを選んだのだろう?
やはり年下の彼の方が、抵抗なく触れられると本能的に感じ取ったのだろうか?
カカシはやはり、大人の男…過ぎて。容易に触れる事など出来ないと。咄嗟に考え取ったのだろうか。
なんとなく、こうして触っているのがカカシの白髪だと置き換えて考えてみる。
しかし……
上手く頭の中で想像できなかった。
『…サスケ君』
小さく。ごく小さな声で、名前を呼んでみる。
しかし返事はなかった。どうやら彼は無事眠りに落ちたようだ。
『…サスケ君。ありがとう。本当に。
ありがとう…ありがとう』
彼の額に、自分の額を触れるか触れないか の距離まで近付ける。
やはり緊張感が体を駆け抜け、まるで電気が走ったように。額が痺れるような感覚。
しかしそれは、全く不快なものではなかった。