第7章 スキンシップと、年下と指先と
「エリは汚くない」
私の気持ちを全部聞き終わると、サスケはキッパリと言い放った。
「全く汚くない。汚くなんかない」
サスケは突如立ち上がる。
『…?』
「それにアンタは間違ってる。
俺は、綺麗なんかじゃない。俺は忍だ。
エリは忍をどんなものと認識してるか分からないが…
俺は、必要とあらば人を殺す。躊躇などしない。
現に、この手で…」
サスケは私を見つめたまま、右手の平をこちらに向けた。
大きく広げられた彼の手の平に、視線が釘付けになる。
「この手で、今まで山ほどの人を傷付けてきた。
アンタは…
この手を。俺の手を汚いと思うか?」
私は、彼と視線を合わす為立ち上がる。
『っ、汚くなんて、ないよ。サスケ君は…汚くなんて、ない』
ゆっくり。けれど着実に。サスケの手の平へと自分の指先を近付ける。
やがて、その距離はなくなった。
極度の緊張から。すっかり冷えてしまった私の指先が とん。と彼の手の平に触れる。
するとすぐに、じんわりと彼の温もりが伝わってくる。
久し振りの他人の体温。その優しい温もりは、
冷えた指先だけでなく、凍ってしまっていた心までも溶かしてくれた。
温められて心が溶けて。雪解け水のように雫が溢れ出す。
やがてその雫は、涙となって瞳から流れ落ちた。
『…温かい、ね。サスケ君の、手は』
「…アンタは、泣いてばかりだ///」
『ふふ、嬉し泣きなら、良いんでしょ?』
廊下で、私達の様子を静かに伺う影になど気付けるわけは私にはなかった。そんな余裕は一切なかったのだ。
おそらくそれは、サスケも同じだろう。
「……」