第7章 スキンシップと、年下と指先と
両親にすら、もう会いたいと思わない。
我ながら、なんとも冷たい言葉を吐いたものだ。
手に持っていた湯呑みを、ゆっくりと机に置く。
「…ごめん、そんな言葉を言わせたいわけじゃなかったんだけど。
君の気持ちは分かったよ。
本当は、こっちとあっちの世界を行き来できるのが一番いいんだろうけどね」
『そうですね、そしたら 行ってきます。くらい言えたので…』
まぁ現実問題、そんなに都合よく事が運ぶわけはないのだが。
「そもそも、アンタはあっちの世界ではどうなってるか分からないだろ」
『そうなんだよね』
可能性はいくつか考えられる。
①既に向こうで落下死しており、魂のみこちらの世界に来ている。
②体ごとこちらの世界に移動しており、向こうでは失踪扱いになっている。
③私の存在そのものが、向こうの世界では無かった事になっている。
『仮にどうなってても、帰るつもりなんて無いから別に良いんだけど…
たしかに はたけさんの言う通り、両親に心配をかけているのだとしたら 少し申し訳ないですかね…』
「…ま!グダグダと色々言っちゃったけど、ここに残るって決めてくれて俺は嬉しいよ。
じゃぁここからは、こっちの世界でこれからどういう人生を歩んでいきたいのかって話をしようか」
カカシの口から、嬉しいと言う言葉が聞けて胸をなで下ろす。
彼にとって私がここに残る事が、迷惑なのではないかと思ってしまっていたから。
面倒な荷物を背負い込んだ物だ。と思われてはいない事が分かって、少しだけ安心した。