第4章 黒いダイヤと、恋と愛と
彼女が作る料理は変わっていた。
食材は見慣れた、ごく普通の物しか使っていないというのに。
いざ調理が終わって食卓に並ぶと、目新しいものに早変わりした。
「美味かった…トマトって、焼くと美味いんですね」
『温かいトマト、美味しいですよね。イルカ先生のお口に合ったようで良かったです』
あぁ、またこの感じだ…
別に特別な事を言っているわけでも、しているわけでもないのに。ずっとこのまま、ただ見つめていたくなる。
多分だけど、サスケもカカシも。彼女のこの独特のふわりとした雰囲気が気に入って側に置いているのではないだろうか。
「…そういえば、今朝言ってたね?
何か、大切な話があるんじゃなかった?」
カカシがそう言った途端に、彼女の肩がピクリと跳ねた。しかし、動揺したのはその瞬間だけ。
すぐに真っ直ぐとカカシと視線を合わせた。
『…はい。聞いて欲しい事があります。
というか…やっと、覚悟が出来たんです』
「ん、そっか」
「分かった」
三人の雰囲気を見ている限り、どうやら軽く聞ける話ではなさそうだ。
「あ、じゃ、じゃあ俺はこのへんで…」
俺は立ち上がる。しかし、内心は強く願っていた。
俺も、ここにいてもいい。と。彼女が言葉を紡いでくれる事を。
『イルカ先生…ごめんなさい』
彼女が口にしたのは、俺が切望していた物とは真逆のものだった。
あぁ。突き付けられる現実。
これが今の
俺と、彼女との距離だ。