第4章 黒いダイヤと、恋と愛と
玄関のドアを閉める。
完全に、先ほどまでの幸せな空気と遮断される。
「…俺は、馬鹿か」
あの三人には、俺の知らない出来事や時間があって。信頼関係や絆があって。
それは、一足飛びで俺が手に入れられる物ではない事くらい簡単に分かるのに…
欲しいと、思ってしまった。
「任務に失敗したからといって、そんなに落ち込まなくても」
「!!カカシ先生」
付いてきていたのか…気配が全く感じられなかったが、それに驚く事はない。この人は里の中でも屈指の忍だ。これくらい容易いのだろう。
「それとも…
何か別の事でへこんでましたか?」
「…なんの、事ですか」
「隠さなくてもいいじゃないですか。別に。
欲しくなったんでしょ?あの子が」
カッと、一瞬で顔が紅潮するのが分かった。
「でも」
俺が言葉を発するのを待たず、カカシは再び俺に告げる。
冷酷に。淡々と。
「貴方じゃ彼女は無理です。エリは普通じゃないから。
普通の貴方じゃ、無理です」
あまりに痛烈な物言いに、思わず乾いた笑いが俺の口を突いて出た。
「…はは、それは、忠告ですか?」
「いえ。牽制です」
この人には、何も隠し事など出来ない。
俺の気持ちなんて、簡単に見透かされてる。
「今の貴方のその気持ちが…完全に芽吹いてしまう前に。摘み取っておこうと思いまして。
では、俺はこれで。彼女が…待っているので」
俺は、よく言ったものだな。
恋だとか愛だとか。そんな事は今はまだ分からない。だと?
じゃぁ、誰か教えてくれ。
これが、恋や愛じゃないというのなら。
一体それはなんなんだ。