第4章 黒いダイヤと、恋と愛と
『イルカ先生!素晴らしい包丁さばきですね!』
「あはは、俺も一人暮らしが長いですからね。器用貧乏ってやつですよ」
彼女の感嘆の声を聞いて、内心飛び上がる程嬉しい。しかし、それを素直に体現するのは…正直憚られる。
なぜなら…
『…もう!さっきからはたけさんとサスケ君はどうしたんですか?二人に手伝ってもらう事はありませんから、座ってて大丈夫ですよ?』
「「……」」
そう。二人が俺と彼女を、結構な至近距離から眺め…いや、睨みつけているのだ。
「俺も手伝うよ?何でも言ってくれたら」
『はたけさん…私、この間あなたにつかれた嘘、私まだ根に持ってるんですよ。当分は台所に立ってもらいたくありません』ぷぃ
「あれはカカシが悪い」
一体どんな嘘をついたと言うのだろうか。
『…私、串を探していたんです。焼き鳥を作る為の。そしたらはたけさん、私に何を渡したと思います?
“千本”ですよ!忍具の。酷いですよね!
私まんまと騙されて、千本に鶏肉を刺したんですから…
まぁ、随分とイカつい串だなぁとは思いましたけど』
俺は思わず、嬉々として千本に鶏肉をうつ彼女を想像してしまった。
「ごめんて、大丈夫だよ。ちゃんと洗ってあるやつだし」
『当たり前ですよ…』いやそういう問題では
「わ、忘れましょう!はい!トマトの皮剥き終わりましたよ!」
彼女のあまりの憔悴ぶりに、思わず話を逸らす。
「おい。焼き物があれば、俺が火遁で焼いてやる」
『うーん、ガスがあるから大丈夫』
「……」
こんなにもバッサリ切られるサスケの姿はなかなか見られる物じゃない。
今の内に目に焼き付けておくことにする。