第33章 帰郷と目論みと、光と闇と
彼が私の頭に頬をすり寄せたから、彼の横髪が私の顔をくすぐった。
「カカシと話をするなんて考え…捨ててしまってよ」
『……』
やはりミナトは、ここまで分かっていた。
すごいなぁ…私、何も言っていないのに…直接伝えたわけではないのに、ここまで察してくれてる。
私、彼といれば幸せになれるのかもしれない。
ずっと彼に守られて、暖かいこの腕に抱かれて弱いままでいても、ミナトならずっと私を守ってくれるだろう。
言いたくない事は、無理に言葉にしなくても分かってくれる。
彼は、そんな理想の男性なのかもしれない。でも…
『でも私…強くなりたい、です。
誰かに守ってもらうだけの自分なんて、私が好きになれないから』
「…はぁ。悔しいなぁ…
悔しいけど、俺は君の そういうところを好きになったんだよね」
ミナトは、少しいじけたように私の頭の上に顎を置いた。腰の後ろあたりで組まれた彼の手に、きゅっと力が込められる。
「カカシよりも、俺の方が君の事必要としてると思うんだけど…
ねぇ?」
『ねぇ…と、言われても…』うーん
「嫌だよ…行かないで。この家を、君が出て行くなんて想像するだけで…俺、心が折れそうだ」
私の肩の上に、頭を預けたミナト。耳から凄く近い位置から彼の悲痛な声が直で聞こえる。
「………」
『…ミナトさん』
ピタリと動かなくなって、声も発しなくなったミナト。もしかして泣いてしまっていたら…どうしよう。
本気で心配になった瞬間、突然ミナトがガバっと顔を上げた。
『!!』
「あーごめん!ウジウジした!
ん、もう大丈夫。情けない俺は終了。
君が決めた事だもんね。俺が何言ったって仕方ない」
『…ミナトさん、色々…ご迷惑をかけて本当にごめんなさい。
私は…自分自身の願いを叶える為に、強くなります。強く…なりたい、です』
私は、ミナトの背中に腕を回して、彼の服をぎゅっと握り込んだ。
「…うん。応援するよ。
それに…」
『??』
「仮に、カカシが “大” が付くほどの馬鹿野郎だった場合…君がこの家に住み続けてくれる可能性だって無くは無い。からね」ふふ
何やら、ミナトが黒く微笑んでいるようだった。