第33章 帰郷と目論みと、光と闇と
『ミナトさん』
私はお風呂から上がったばかりのミナトに声をかける。
「どうしたの?ナルトは…もう寝たのかな?」
『どうでしょう…お部屋には戻りましたよ?』
「そう、まぁ寝てるだろうな…あいつ、家にいる時は食ってるか寝てるかだから」はは
『…ミナトさん、』
いつもなら私が名前を呼べばすぐに、どうしたの?と向き合ってくれるミナトだが。今日はどういう事か私をスルーしてしまう。
私は再度名前を呼ぶ。
「修行の旅に出る度、強くなるからなぁ…ナルトの奴。
そろそろ本気で追い抜かれるんじゃないかって気が気じゃないんだよ」
やはり私の気のせいではない。
彼は、意図的に私の話を聞くまいとしている。
しかし、この話は絶対にミナトに聞いてもらわなければならない。
『ミナトさん、話を…聞いてもらえませんか』
「ん、嫌だよ」
顔を上げたミナト。そこには、いつもの笑顔なんて微塵を浮かべていなかった。
「そんな…覚悟決めました。みたいな顔してる君の話なんて、聞きたくない」
『…ミナトさんは、どうしてそんなにも、私の事が分かるんですか?』
「なんでかって?やだなぁ、普通こういう事わざわざ言わせる?
でもいいよ。何度だって言うから…。
君の事が、好きだから。君をずっと見ているからね。だから分かるんだ。
エリが、これからどうしようと考えてるか」
相変わらずこの人は、好意を伝える時はこちらを真っ直ぐに見て。照れも何もなく、ただ自分の気持ちを真摯に伝えてくれる。
『やっぱり…ミナトさんは強いですね。
私には、真似できません…。私は、弱い』
「いいんだよ。君は強くなんてならなくていい。
むしろ、弱いままでいて欲しいよ。
ずっと、俺が守ってあげるから。だから…」
ミナトが、ついに私の腕を引いて。抱き寄せられる。彼の鎖骨辺りに頬が触れた。