第32章 花の後と、墓参りとモノクロームと
カカシが自らの意思で、私の身を案じ尾行していた。
カカシが私を必要と思ってくれたから、セツナの所に行くなと言った。
そんなのは、ただの私の切望だった。
「エリ?」
私の様子がおかしい事に気が付いて、彼は一際大きな木の枝の上に私を下ろした。
「どうしたの?大丈夫?どこか痛い?」
『っ、ちが 』
本気の心配顔をして、私に怪我がないか確認するカカシ。
しかし、もうこんなのはやめて欲しい。
もう悪戯に優しくするのは、やめて欲しい。
『私の、事…突き放したくせに!!
どうして、そんなに優しい顔するんですか!本気でっ、心配するんですか、ぅ
それも、ミナトさんの命令、ですか…?私の事…まるで、大切にするみたいに、扱えって…言われたの?
貴方は、命令されれば何だってするんですか、私には…貴方が分からないっ、分からなくて、辛いっ!も しんどぃ…、もう、はたけさんの事なんて!いっそ、
嫌いに なってしまいた』
唐突に、唇が塞がれた。
私の言葉の続きは、カカシの中に吸い込まれてしまった。
『ん、…っ、んぅ』
「……エリ、っ」
彼が、私の名前を呼んだ。
なんて熱くて、切ない声を出すのだろう。
はたけさん、貴方は、これも命令で仕方なくって。言い張るつもりですか?
『っ、は 』
泣きじゃくっていたから、それでなくても酸素が全然足りていないのに。この激しいキスで、より肺がそれを求める。
しかしカカシは一向に私の唇を解放してはくれない。仕方ないので、時折互いの唇から生まれる隙間を見つけては、そこから酸素を懸命に取り込む。
苦しくて、辛い、キスのはずなのに。
私はカカシの頭を、この両手の中にしっかりと捕まえていた。
あまりに強く掴んでいるので、いつのまにか額当てがずるりと落ちて、木の幹の上にカランと音を立てて落ちた。
その事にも気付かないくらい、私達は互いの唇を求める事に必死だった。
嬉しさからか、苦しさからか。私の目には涙が浮かび。
いつの間にかカカシの腕は、私の体をしっかりと抱き締めていた。