• テキストサイズ

モノクローム【NARUTO】

第32章 花の後と、墓参りとモノクロームと




—————


セツナは今、何をしているのだろうか。

上手く考えの回らない、熱に浮かされた頭で懸命に考える。

導き出された答えは、これはキスだ。

しかし、花が互いを隔てる擬似的なキス。


やがて、セツナの唇が離れた。

すると支える物が無くなってしまった桜の花は 風に攫われていってしまう。

なんとなくそれが寂しくて。花を視線で追ってしまう。

「…今こそ、俺の力の使い所だったのに。

舞い上がっちまって、時間止めるの忘れた」

少しだけ照れたみたいに、セツナが呟いた。

『セツナの…幸せって、一体なに』

キスの直前、彼が言わんとしていた事を 私は問いただそうとする。


「…幸せになる権利を放棄しようと思っていた俺に、エリが言った。
俺にも幸せになって欲しいって。

…本当は、言うつもりなんかなかったのに。
でも、いいな、言うぞ。
俺が、俺自身の願いを叶える為に。


…エリ。アンタに俺の隣にして欲しい」

『!!』

私を抱き締めたままで、私を見下ろして。
セツナは言った。己の願いを。

「俺には、導いてやるべき奴等がたくさんいる。
アンタがさっき言ってたみたいに…
俺がそいつらに手を差し伸べたいと思ってる。

そんな俺を、一番近くでエリに見てて欲しい。

だから、俺と一緒に時の里に」


パキっと。誰かが枝を踏み鳴らす音が聞こえた。

「『!!』」

思わず私とセツナはその音の方へと振り向いた。

「あ……ごめん、わざとじゃないよ」

一体、何に対しての謝罪なのか。
幹の影から ゆっくりと出て来た彼の名を、私は呼ぶ。

『はたけさん…!』

それから、セツナの胸を軽く押して距離を取る。

「……」

セツナが微かに切なそうな表情になったのを見てしまって。胸が痛んだ。

「…狐は、全部振り切ったと思ったんだがな」

「ごめんねセツナ。でも、その子は連れていかれたら困るんだ」

『!』

「……分かってる」

/ 630ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp