第32章 花の後と、墓参りとモノクロームと
まるで、何かの儀式だ。
あぁこれが、俺と彼女を縛り付ける楔にでもなればいいのに。と、ぼんやりと思った。
『セツナ。貴方はこれから…
誰かの為の、灯台になって』
俺は顔を上げる。
『私を導いてくれた彼等のように。
貴方を導いた私のように…。
セツナも、誰かを照らす灯台になって欲しい。
きっと、迷子になってる人は…この世界にはまだまだたくさんいるはずだから』
「………」
事実、俺の里にはまだ木ノ葉や、自分がいた里を恨み。復讐の為に、その命を燃やそうとしている忍が溢れている。
そうか…今度は、俺の番か。
これからは俺が、そういう奴の道を照らす。
『もう…死んでしまった人は生き返らないけど。
でも!今生きている人の為に出来る事は絶対にあるから』
「…あぁ」
俺は、瞳を閉じてサキやコウに想いを馳せる。その他にも。たくさんの仲間の顔を思い出す。
『あと、もう一つ…』
「お願いは一つじゃなかったんですかー」
『た、たしかに そう言ったけどっ!こっちも大切なんだから茶化さず聞いて!』
跪く俺に、彼女は手を伸ばして言った。
『セツナも、幸せになる努力をやめない事』
「……」
俺自身の、幸せ…。
『セツナが幸せになれなかったら 私も、きっとお兄さんも、悲しいから。
絶対…絶対、セツナも幸せになる事!
この場所で…。私とシュンさんの前で約束して下さい』
「……御意」
俺は、彼女の言葉ひとつひとつをしっかりと噛み締めてから。
彼女の手を取った。
すると彼女は、一際強い光を放ったみたいに微笑んで。その顔を俺に向ける。
本当に、眩しい。直視出来ない太陽のようだ。
でも、どうしようもく美しい笑顔。
ずっと見ていたくなる、この笑顔。
そう感じてしまったから、俺は思わず自らの呼吸を止めた。
そうすると、当たり前みたいに静寂が訪れて。ピタリと時が止まる。
「…………」
俺は彼女の静止した笑顔を見つめる。