第4章 黒いダイヤと、恋と愛と
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「…はぁ」
カカシの家の前の大きな木に登って。双眼鏡を手に玄関のドアを見張る。
こんなことを始めてかれこれ七時間ほど経過しただろうか。
果たしてこの行為に意味があるのか、ないのか。俺には全く分からない。
依頼内容はこうだ。
家の中から誰も出さない事。
家の中には誰も入れない事。
そして、この任務の内容を他言しない事。
「なんなんだ…一体、あの家に何が…」
おそらく、こんな事を考えても無意味なのだろう。俺は言われた事だけをこなしていればいいのだ。
この七時間の間、家の周りには怪しい者は現れていない。
勿論、家の中から誰かが出て来る気配もない。
…そりゃ噂にもなる。ただでさえ謎が多いカカシの家をただ見守る。こんな任務依頼が毎日だ。
いやいや、もう考え方を変えよう!逆に考えればこんなに楽で安全な任務はないではないか!
そうだ。ただただカカシの家のドアを何時間も何時間も見つめているだけの楽な仕事。
「…いや無理だ!気が狂っちまう!!」
その時だった。
俺の平和な時間は突如終わりを告げる。
『っ、いやーーー!!///』
「なんだ!?」
いま確かに、家の中から女性の悲鳴が聞こえた。しかもその声からは、かなりの緊急性を感じた。
俺は無意識に木を駆け下り、ドアノブを思い切り引いていた。