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モノクローム【NARUTO】

第29章 別れと髪と、湯と理性と





『ん、うんうん!硫黄臭い!』

ご機嫌な様子で俺の背に乗る彼女は、すんすんと鼻から息を吸い込んで言った。

「この辺りのはずなんだよな…」

俺は片手に持った地図で辺りを確認しながら注意深く地面を蹴る。

『あ、シカマル君あったよ!ほら…』

真っ直ぐと前を見据えていた彼女の方が、俺より一足先に目的の物を見つけたようだ。

『温泉!』


さほど苦労する事もなく到着したここは、セツナおすすめの湯治場。

エリの背中の傷にも効くだろうし、休憩するにももってこいだ。立ち寄らない理由は見当たらなかった。


そこそこ広い敷地に、ホカホカと温かそうな湯がなみなみと張られていた。
湯船の中央に位置する飾り石の大岩も、雰囲気を出していて良い。そして、さらに俺たちの目を引いた物は…

『桜が咲いてる!とっても綺麗…。花見温泉なんて。贅沢だね』

そう。今の時期しか堪能出来ない、枝垂桜が温泉の脇に堂々と咲き誇っていた。

「あそこの小屋が脱衣所だろうな。行ってこいよ」

とても整った設備とは言えないが、服を脱いで支度をするには十分だろう。

『行ってこいって…シカマル君は?』

「は?」

まさか、こいつは、また…

『一緒に入らないの?』

はい、出た。こいつの天然発言。
もういちいち驚かないが、まさかこんなにも堂々一緒に入る前提でしたと宣言されるとは。

「…俺はいい」

途端にがっくり来る。エリの中で、いかに俺が一人の男としての見られていないのか思い知らされるようで…。

『私をずっと背負って移動してるシカマル君の方が疲れてるだろうし…

あ、ほら。あそこの中央にある大岩の反対側に、それぞれ入れば見えないよ!』

「…はぁ。あのな、それ、例えば 一緒に来てたのが俺じゃなくてカカシ先生であっても同じ事言えるのか?」

『?、うん』

そうか。別に俺の事を意識してないから、簡単に一緒に入ろうなどと、言い出したわけではないらしい…

「…それなら、まぁ…一緒に入るか」

もうこうなればやけだ。役得と思って同じ湯に浸かる事にした。

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