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モノクローム【NARUTO】

第29章 別れと髪と、湯と理性と




私の体調が落ち着いて、数日間の旅に耐えられるだろうと。医者のお墨付きが出たのは、約三日後の事だった。


「別に急いで発たなくてもいーだろ…」

私とシカマルが、今日の出発を告げた昨日の夜から。セツナはずっとこんな調子である。

背の高い大男が不貞腐れる姿はどこか可愛い…。

『そう言ってくれるのはありがたいけど…
サスケ君の事も気がかりだから、やっぱりもう行くよ』

私が笑顔で告げても、やはりセツナは不服そう。

「駄々捏ねてるなよ、めんどくせぇな」

「うるせーちょんまげ野郎」

うーん。いつのまにか、この二人は仲良しだな。


「おい、これ昨日話してた地図だ」

そう言ってセツナは、シカマルに小さな紙を渡していた。

おそらくは、行き道で通ってきた裏ルートを示した地図ではないだろうかと予想する。

あの道を使えば、木ノ葉と時の里間を丸一日少ない日数で移動出来る。

「あぁ」

シカマルはそれを軽く確認すると、ポケットにしまった。

『じゃぁセツナ。ありがとう。
落ち着いたら遊びに来てね!待ってるから』

「…待て。一つ…頼みがある」

『ん?何?』

ふわりと、セツナの大きな指が私の髪に絡まる。

「…髪、少しもらってもいいか?」

『え、あ、うん別に』

私が、別に良いよと答える前に、セツナは苦無で私の髪をひと掬い切り取った。

さくっという小気味の良い音が耳に届く。

『ちょ、いまフライングぎみ…!まぁいいけど…
でもどうするの?そんなもの…』

「…べつに」

そう言ってセツナは嬉しそうにして、宝物のように私の髪を和紙に包んで懐にしまった。

そんなやり取りを真顔でずっと眺めていたシカマルが、ついに口を開いた。

「そろそろ行くぞ。じゃあな」

『あ、うん。じゃあセツナ!またね』

「あぁ、エリ、またな」


彼が、私に “ またな ” と告げるのは二度目だ。

だが今回のその言葉は、一度目の時と違って 一切の陰りはなくて。

また確実に再会出来るとの予感が、私にはあったのだった。

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