第29章 別れと髪と、湯と理性と
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「カカシ先生!!どうして…エリを置いて里に帰ったんだ…!
あの後、アゲハが病室に忍び込んで…」
「シカマル?え、待って、アゲハが現れて…エリをどうしたって?!」
「首を掻っ切られて、即死だった!」
「え…そんな…嘘、でしょ」
『…………』
「エリ…、エリ?嘘、だよね。目を覚まして…、
エリ!!」
「っっ!!!」
「カカシ?大丈夫?凄くうなされてたよ」
俺はミナトに体を揺すられて、ようやく悪夢から解放される。
「……先生」
嫌な汗を、全身にかいていた。
大きく深呼吸をして。気持ちを落ち着ける。
俺は今、里に帰る道中。こうしてミナトと共に野営にてしばしの休息をとっているところだった。
「…うわごとで名前、呼んでたよ?
彼女を置いてきた事を後悔してるのかな?」
「…えぇ、少し」
この人に嘘をついたとて無駄だ。それを知っている俺は、はなから正直な気持ちを吐露する。
「無理して俺に付き合って、今日帰る事なかったんだよ?
カカシにしては珍しくエリにべったりじゃなかったよね。不思議だったんだけど…
ねぇ?どうしちゃったの?」
さて困った。どう答えようか。
まだ自分の中でも答えが固まっていないのだが。
「………」
「あ、ズルイ。だんまりか」
そうだ。こういう時は沈黙に限る。
「なんだ。俺はてっきり、
もう俺には彼女は手に負えない。戦線離脱!
ってなってくれたなら、ライバル一人消えてラッキーって思ったんだけど」あはは
「…先生、殴っても良いですか?」
「うーん、痛いのは嫌かなあ」