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モノクローム【NARUTO】

第29章 別れと髪と、湯と理性と




「とにかく」

セツナはすくっと立ち上がった。その拍子に、少しだけベットが音を立てて軋む。

「そんな偽善に、俺は救われた。止まれた。
ありがとうな」

『……っ、』

ありがとう。それはこちらの台詞だ。

あっちの世界で、死んだように生きていただけのこんな私が。誰かの道標になれたのだろうか。

闇に突き進む、苦しさの海で溺れている自分を救い出してくれてありがとうと。
私のおかげだと。そう言ってくれる。

それだけで、私が生きている意味が見出せたような気がする。

『よかった、…セツナ、よかったねぇ、うぅ、よかった…』

私は涙を見られるのが恥ずかしくて、顔を枕に押し付けて泣きじゃくる。

そんな私に、彼がゆっくりと手を伸ばしてくる気配がした。

「…エリ」


しかし、突然大きな音ともに扉が開け放たれた瞬間。その手は動きを止めた。

「話は終わったかー。おい何泣いてんだよ、本当にめんどくせぇなアンタは」

『シカ、マルく、だって…うぅー。セツナが、嬉しい事…』

「分かった分かった、ほら泣くな 体力消耗する」

シカマルが、私の背中に優しく手を添える。

「…クソちょんまげ。ぜってータイミング見計らって入って来やがっただろ…」イラァ

「なんの事スかー」しれぇっと


そしてその後、セツナは再び病院を出て行った。

彼もミナトと同じ立場なのだ。きっと私には想像もつかないくらい多忙を極めているはずだ。

特に今回、黒の塔で犠牲になった忍の数はかなりの人数だったはず…
私の方から、何人亡くなったのか、とか。

サキやコウは、どうなったのか。などは聞けなかったのだが…。


きっとセツナも、気持ちを整理する時間が必要だろうと思った。

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