第28章 真実と兄弟と、増悪と愛情と
「エリ、本当にいいんだな」
『っん、』
彼女は苦しそうに頷いた。
「そんな極限状態の体では試してない…。どうなるか誰にも分からない」
『っ、いい、!』
「分かった」
シカマルは、やっと覚悟を決めたみたいだった。
そして俺に言った。
「セツナ、エリの目を見てくれ。
四秒以上。その間は目を逸らすな」
「…分かった」
わけが分からないのは、俺だけではないだろう。ミナトやカカシも、険しい顔で俺たちの所動を見守っている。
俺を、彼女の言葉が突き動かしていた。
自分を信じろと。エリは俺に言った。
当たり前だ。信じるも何も、むしろアンタ以外の誰を 俺は信じられようか。
「っ!?」
彼女の瞳を覗き込んで数秒。
自分の中のチャクラが、ぐちゃぐちゃに掻き回されるような感覚に襲われる。
「!?な」
「まさか…解けたのか!?」
驚きのあまり、固まるのは俺とミナトとカカシ。何が起こったのかまだ分からない。
しかし、俺達を取り囲んでいた贄牢閣の結界はたしかに消滅した気配をみせた。
驚く俺たちを他所に、シカマルはこうなる事が分かっていたとでもいうように。
彼女を横抱きにして移動する準備を終えていた。
「早く医者のところに案内してくれ!」
カカシの声に弾かれるように、俺を筆頭にして全員で塔を後にしたのだった。