第28章 真実と兄弟と、増悪と愛情と
「セツナ!待てセツ」
時間を停止する。
心臓が耐えられなくなって、時を進める。
「ナ!!」
「セツナ!お前は」
時間を停止する。
また時が進んでしまう。
「死ぬな!お前はシュンの代わ」
どんどん、心臓に負荷をかけていく。
だんだん、意識が遠のく感覚に陥る。
「りに生きなきゃいけない!」
朦朧とする意識を、心臓の痛みが引っ張ってくれる。
そんな極限状態の中。
いま一番死に近いはずの奴の目が、一番輝いて 俺を捉えていた。
『待って、…セツ』
分かってる。お前は馬鹿だから。また俺を救おうとして止めるのだろう。
『ナっ、…お願い私を』
俺は御構い無しに、死への道をひた走る。
『——信じて』
とっくに、死を覚悟して乗り越えたつもりだったのに…
その懸命な視線に囚われてしまう。
魅入ってしまう。
俺は思わず…
能力を使う事よりも、彼女の言葉に耳を傾ける方に意識持っていかれてしまった。
「はぁ。良かったぜ 止まってくれて。おい、誰も死に急ぐなよ。
まだ状況は変えられるかもしれない」
シカマルが、俺達全員に語りかける。
状況を変えられる?この最悪ともいえる現状を変えるって言うのか?
苦しさで言葉も発せない。そんな俺の代わりにカカシが言った。
「シカマル、何か策があるのか」
「はい」
『シカ、マ』
何を考えてか、彼女は他の誰でもないシカマルに手を伸ばした。
「分かってる。喋んな動くな」
そう言ってシカマルは、エリが横になっている側に屈み込んだ。
「少しだけ、確認の時間を下さい」
シカマルは、俺達にそう申し入れた。
この藁にでもすがりたい状況だ。止める者は誰もいなかった。