第28章 真実と兄弟と、増悪と愛情と
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「………」
予想を上回る衝撃の事実。セツナは勿論、私もしばらく言葉を発する事が出来なかった。
「急にこんな事を聞かされても、混乱して当たり前だ。
だからこそ、この事実は俺と先生が墓まで待って行くつもりだった」
カカシの言葉に、ミナトは静かに頷く。
「セツナ…俺は、ずっと分からなかった。お前の為だと思って、全てを話さなかった事。
でも今日、それはやっぱり正解だったと思ったよ。
里を出てから、きっと死に等しいような苦しみもたくさん負っただろう。俺の想像を越えるような辛い経験もしたかもしれない。
でも、ごめんなセツナ…
俺は嬉しいんだよ。
だって。お前は今も生きている。
こうやって、俺の目の前に現れてくれた。
ありがとう…セツナ」
ここから、カカシとミナトの背中が見えるはずなのに私には見えなかった。涙で、前が見えなかったのだ。私は後から後から流れ出る涙を止めるすべを知らない。
「…じゃあ、なんだ。
俺は、居るはずもない仇を討つ為に 無駄な五年間を過ごしてきた、ってのか」
『……セツ』
「止まれるわけ…ねーだろ。
今更やめられるわけ!ねーだろ!!」
「やめろって…。あんたが肉親を失って、苦しい思いをしてきた事は察する。
でもな、これは誰のせいでもない。
強いて言うなら。贄牢閣の術を仕掛けた術者が、アンタの仇って事になるんじゃねーの」
シカマルは、未だに復讐の炎を燃やし続けるセツナに向かって、優しい口調で諭してみせた。
しかし、彼を止める事は叶わなかった。
「…無理だ。無理だ…俺はもう」
一度大きく振り上げてしまった拳を、振り下ろす場所を必死になって探していた。
「そうだ…そんな話は、
嘘なんだろ?作り話だ…!兄貴が、兄貴の寿命が残り少なかったって?自ら死を、選んだだと?
適当な事、言いやがって!」
「セツナ…」
ミナトとカカシが彼の名を呼ぶが、何一つ効果を成さない。やはり彼はもう止まれないのか。