第28章 真実と兄弟と、増悪と愛情と
それからすぐに、贄牢閣の術は当然のように解けた。しかし
俺とカカシは、まだそこから動けずにいた。
彼の、まるでただ眠っただけかのような安らかな死に顔を眺めていた。
「…先生」
「分かってるよ。行こうカカシ。シュンの想いを無駄には、出来ないからね」
俺とカカシは、シュンの体をひとまず人目に付かないように隠してから。既に戦いの佳境にある本陣へと合流した。
一年は要すると言われていた戦を、俺たちはたった二日で終息させた。
あの戦いは文献として記され、後世へと残す為に保存されている。
しかしそこには、シュンという尊い犠牲があった事は一言も記されていない。
俺とカカシも、時任シュンという忍がいなければ。あそこまで戦う事は出来なかったと思う。
全ての戦いを終えてから、俺達はシュンの元へと帰って来た。相変わらず、綺麗な寝顔のような表情だった。
「カカシ…」
「…はい」
「セツナは…この事実を受け止めきれるかな」
「……分かりません」
既にシュン以外の肉親を失い、ついに最後の拠り所まで失ってしまった青年の末路は、考えただけでも胸が張り裂けてしまいそうだ。
ましてその最も愛する存在の最期が、自殺。など。そんな現実を突き付けなければいけないのか。
セツナには絶対に生きて欲しいという、シュンの最後の願い。俺はなんとしてでも叶えてやらなければ。
しかし…
これから彼は、生きていくにあたって理由を見出せるのだろうか。
シュンを追って、逝ってしまいなどしないだろうか。
どうにかして、彼に生きる目的を与えなければ
「…そう、か」
「先生?」
その時、俺の中に浮かんだ妙案は、
正解だったのか不正解だったのか。未だに答えは出ていない。