第28章 真実と兄弟と、増悪と愛情と
俺の言葉に、カカシも安堵したようだった。
彼も、今まで共に戦った仲間を。これ以上失うのは耐えられないのだろう。
「…はは、本当に二人は…優しい。
俺、そんなカカシとミナトが…本当に好きだったんだよ」
“ だった ” なんて、過去形にするなよ。
と言ったつもりだったのに。声が出ていない。
あれ?どうしてだろう。なんだこの不思議な感覚は。と思った次の瞬間。
「ぐっ…っ!は、っ…は!はぁっ」
急にシュンが苦しみだし、たたらを踏んだ。
「!?シュ」
カカシがシュンの名を呼ぶのも、途中でブツリと途切れてしまう。
「ン!?」
「っあ、…、かはっ、はぁっ、は」
みるみるシュンの顔色が悪くなっていく。
やっと気付いた。
シュンは時止めの能力を、連続的に使用しているのだ!そして勿論そんな無謀な事を続ければ…
「やめろ!シュ」
「ン!!」
「待てって言っ」
「てるだろ!お
「い!シュン!」
駄目だ。俺とカカシの言葉がこま切れになる。
それはまるで録画してある映像を、一時停止。再生。一時停止。再生。と操作しているような、そんな感覚。
「っは……ふ、…っは」
シュンの呼吸が、明らかに弱々しい物へと変化していく。そんな時だった。
彼の唇が、微かに言葉を紡ごうとしている。
「……」
「シュン!!おいシュン返事をしろ!」
「カカシ静かに。シュンが何か…」
二人で、彼の最期になるであろう言葉を拾おうとする。
「カカ、シ、…ミナトを、支え て…くれ、
ミナト、は、ほかげに、なる…男だか、ら
あと…弟…」
静かに、ただ静かに。
「セツ、ナを……頼ん、
セツナに、は…生きて、いて
欲し」
その、ささやかすぎる、愛しい者への願いは。
彼の流れ落ちる涙と共に、静かに
俺たちの胸へと確かに響いた。