第28章 真実と兄弟と、増悪と愛情と
「こうなったら、いっそじゃんけんでもします?それで、負けた人が生贄になる。みたいな…」
カカシが、間の抜けた声で。右手でチョキを作っていた。
「…カカシ、馬鹿な事言うなよ…ガラでもない」
「はは。そう?いいと思うな。じゃんけん」
「さすがシュン。話がわかるねぇ」
シュンがカカシの悪ふざけに乗っかった。
こういう時だからこそ。少しでも明るい空気にしたいと思っての事だろう。
「俺がパーを出すから、二人は…チョキを出してくれたらいい」
その言葉に、俺とカカシは思わず言葉を失った。
「…シュン、それは面白くない」
言い出しっぺのカカシですら、顔からは笑みが消えていた。
俺達が、彼は冗談で言ったのではないと悟ったのは。彼が自らの喉元を苦無で、かっ切ろうとした時だった。
「!!シュ」
名前を呼ぶよりも早く、カカシが彼の手から苦無を奪い取り。それを確認してから俺はシュンの両腕を体の後ろ側へ捻りあげた。
「…お前いま、何をしようとした」
「……ここを出るには、誰かが死ぬしかない」
「それがどうしてシュンなの。
先生は時期火影だから、死なせるわけにはいかない。
シュンには、待ってる奴がいる。
誰かが犠牲になるなら、俺が一番だと思うけど」
カカシまで馬鹿な事を。どうして俺の教え子や同僚はこうも揃って、他人の為になら簡単に命を投げ出せてしまうのだ。
俺はお前達に、そんなふうになって欲しくはなかったというのに。
「…二人とも、優しいなぁ…。
本当はもう、気付いてるだろうに」
シュンは、悲しそうに瞼を閉じた。
「俺の命は、もう長くないって事」