第27章 到着と生贄と、執念と偽善と
『シカマル君!三人を止めて!』
「おい馬鹿言うなっつの…」
シカマルは私に背を向けたまま毒づいた。私はそんな彼に食らいつく。
『戦わなくてもいい方法がある!』
「…アンタの考えは分かってる。その瞳を使って、解術しようってんだろ」
シカマルは、そんな事はとっくに考えついていたと言わんばかりに言い放った。
「でも、駄目だ」
『どうして!』
「…セツナに、エリの瞳の能力を知られるのは、危険過ぎる。
いいかよく聞け。最善は、俺達がセツナを生贄として捧げ、術を解除する。これだ」
シカマルは一度も私を見る事もなく、ずっと背中をこちらに向けたままだった。
「…頼むから、大人しくしててくれよ。
セツナが復讐とやらを諦めて、こっから逃げ出しでもしたら俺たちは詰みだぜ。
それが最悪のパターン。そうならねぇように俺がこうやって気を張ってんだからよ…」
セツナの顔色が、どんどん悪くなっていく。
時を止める技を多用しているせいだろうと思う。
しかも足に怪我を負っているのだ。誰がどう見たって勝負は付いている。
「…そんな不安そうな顔するな。言っただろ。
アンタは俺が守ってやるって。それに木ノ葉最強の忍が二人もついてんだ。絶対に救ってみせる」
『…救う…』
「…あぁ」
『救うって…。救われるのは、私達だけじゃない。私は…嫌だ、それじゃセツナが可哀想だよ…。
私は、セツナも救いたい』
「……」
やっとこちらに向けてくれた顔。それはとてつもない呆れ顔だったけれど。
『セツナも助けよう!』
私は、この場に似つかわしくない 満面の笑顔を彼に返した。
「あのな…そういうのは偽善っていうんだぜ」
『そうだよ。でも、偽善も善の内!』
「…、あーもー…アンタって…本当に…なんでそんなに次々面倒な事を…、意味が分かんねぇ…全く理解できねぇ!
でもまぁ…ここまで乗っかっちまった船だし。しゃあねぇから、少しなら協力する」
『!シカマル君』
「ただ、アンタが目を使うのは最終手段だ。
…こっから出る算段組むのは、とりあえずあの人等が和解した後だ」
『和解…そう。そうなんだよね。三人とも、順番間違えてる』
「順番?」
『殴り合いの喧嘩する前にまず話し合いでしょ』
「…殴り合いの喧嘩どころか、既に本気の殺し合い勃発してんだけどな」はぁ