第27章 到着と生贄と、執念と偽善と
「…贄牢閣の術。たしか、捕縛系の忍術。
今は使える者がほとんどいない幻の術だから、俺も詳しくは知らねぇんスけど…」
シカマルが、ミナトとカカシ。どちらにともなく話しかける。
「…あぁ。捕縛系では最強の術だ」
答えたのは、カカシだった。
そして、この術に関しての詳細をシカマルに話し始めた。
「一定の広さの空間に、生物を閉じ込める術だ。
いくつかの特徴がある。
一、術者だけは、捕縛の制限に含まれない。自由に結界の内外に出入りが出来る。
二、一度発動させれば、術者にも解術は不可能。
三、解術の方法は一つだけ…」
「…贄牢閣。読んで字の如くって事っスか…」
「あぁ。
生贄を捧げるしかない」
「…そういう事だ。っはは…どうする?
お前達は、生贄に誰を選ぶ?
兄貴の時と同じように、お前等にとって一番命が軽い俺を殺すか?そこに転がってる瀕死の部下を殺すか?
それとも…
愛する者を殺すか?」
さらにセツナは付け加えた。
「普通はこの術が成功した時点で、術者はすぐ脱出するのがセオリー。
外で待つだけで、お前等が出て来る時には、確実に頭数一つ減ってんだからな。
でも、それじゃぁ復讐にらなねぇ…
俺は、アンタらが苦しむ姿が見てぇんだよ。
お前達の目の前で女を殺してから外に出る。
それでやっと、俺の復讐は完成だ」
用意周到に、計画されたこの復讐劇。
彼は、この五年間これを実行する事だけを考えて生きてきたのだろう。
コウもサキも、この計画を遂行する為に死んでいったのだろう。
どうやったらこの地獄みたいな状況を打破出来るだろうか。
忍でもなんでもない、ただの人間に過ぎない私に協力出来る事など無いだろう…
『!そうだ…』
いや…違う。ある。一つある!高確率で贄牢閣の
術を破れる方法が!
私がそれを閃いたのと、ミナトとカカシがセツナの方へ一歩進み出たのは 同時だった。
「…やっぱり、そう来るよな。分かってた。
いいぜ…来いよ。兄貴を殺したみたいに、今度は俺を殺しに来いよ!
そこそこ早いお前らと、時を止められる俺の勝負といこうや」
「ん、そこそこ早いか。言ってくれるね。
セツナ…お前を殺したくはなかったが…この状況を作り出してしまったのはお前だ。
申し訳ないけど、死で償ってもらおうか」
「…シカマル、エリを頼んだよ」