第27章 到着と生贄と、執念と偽善と
「セツナ、どうして彼女を巻き込んだりした。
俺を殺したいならいつだって相手になってやるつもりだった…」
そういうミナトの表情には、悲しさと覚悟とを孕んでおり。見ているのも辛くなった。
これが…自分が殺した人間の、弟に向ける表情だというのか。
「お前、勘違いしてるみたいだがな。
俺の復讐は、お前達を殺す事じゃない」
「……」
既に全てを悟っているのであろうカカシは、静かに目を伏せた。
「俺の復讐は、
五年前、お前達がシュンを殺した状況を再現し。
さらにその舞台で…
お前達の “ 一番大切な人間 ” を殺す事だ」
全員の視線が、一気に私に突き刺さる。
しかし。そんな事を気にしている場合ではなかった。
私はいまセツナが口にした言葉を、ゆっくりと理解し飲み込もうと必死だった。しかしその事実をなかなか頭が受け止めてくれない。
セツナは、初めから私を殺すつもりだった?
そんな事実。認めたくない。
カカシもミナトも。これが夢なら覚めて欲しいといった表情だった。それが、今のこの絶望的な状況を物語っている。
「セツナ。確かに俺達は五年前のシュンとの任務中、この術にかけられた事がある。
お前がその事実に辿り着き、会得しているという事は…
会ったのか?術者に」
ミナトの問いに、セツナはノータイムで答える。
「あぁ。全ての術式を受け継いで、その後は勿論…殺してやった」
「…そうか。それを聞いて、少し救われた気分だよ」
「救われた…だ?
確かにその術者も、兄貴が死ななきゃならなかった要因ではあった。
だが勘違いすんなよ?
シュンに直接手を下したのは、お前等二人だ。
俺が最も憎んでんのは、お前等二人だ」