第27章 到着と生贄と、執念と偽善と
彼が呟いた瞬間、広い部屋いっぱいに魔法陣が浮かび上がった。
あまりに巨大なそれは、気持ちを不安にさせるような青い光を放っていた。
そして数秒間光り続け、やがてその光は徐々に落ち着きを取り戻したのだった。
私を抱くカカシの手が、震えた気がした。
「…まさか、今の術は…」
「俺が…何も知らないと思ったか?
五年間、何もしてこなかったと思ったか?
調べた。そして会得した。この術を。
全ては…この日のために」
「……そうか、これが…お前の復讐か。セツナ」
私は静かに地面に降ろされた。
もう逃げるのは諦めたのだろうか。
カカシの手前、口に出す事は出来なかったが。私はここに一人で残ろうかと思っていた。
苦しむセツナを、復讐の念に苛まれ続ける彼を、私はどうしても一人にしておきたくなかったから。
私を背に庇い、セツナへの警戒を怠らないカカシだったが。彼はもうカカシに何か仕掛ける気はないようだ。
これは一体どういう事だ。
そうこうしてるうちに、私の後ろに位置する階段から足音が聞こえてくる。
思わず振り返ると、そこにはミナトの姿と…
『ミナトさん…シカマル、君、?』
シカマルは私の無事を確認すると同時に、安堵の表情。それはミナトも同じだった。
「よかった…とりあえず無事だね」
『ミナトさんっ…どうして、来てしまったんですか…貴方は』
私の言葉は、彼の耳には一切届いていなかった。
「…波風っ…ミナト!!」
「…セツナ」
長年、因縁の関係であり続けている彼等が…相対し睨み合っていた。