第27章 到着と生贄と、執念と偽善と
『っ、!!』
予想される惨劇に、私は思わず目を瞑りそうになったのだが。恐々ではあるが、なんとか目を開いて見届けた。
しかし…私の目に映ったのは、予想外の展開を迎えた二人だった。
確かにカカシは、電気を纏った手で体を貫いていた。しかしそれは…影分身をした彼自身のみだった。
まるで瞬間移動でもしたように、セツナの姿だけ消えていたのだ。
カカシは、影分身ごとセツナを仕留めるつもりだったのだろう。消えた影分身のみを貫いた 自らの手をじっと見つめて呟いた。
「…やはり、セツナもあの能力を受け継いでいたのか」
「そういう事だ」
音も無く、カカシの背後から姿を現したセツナ。
どうやら予想していた展開だったようだ。カカシもそこまで驚いた素振りは見せていない。
「…そうなると、俺一人では荷が重いか」
「謙遜すんなよ。
お前の写輪眼と俺の能力、比べてみればいいだろ」
『セツナの能力は…瞬間移動?』
私はサスケとセツナの戦闘を思い出す。あの時もたしか、彼は忽然と姿を消したように見えた。
目では追いきれないほどのスピードで移動したのではないか?と私は予想したのだが。
「瞬間移動なんて、そんな可愛いもんじゃ、ないんだよ。これは」
カカシは、これから来る少し先の死闘を予感しているようだった。
左目に赤い光をたたえながら、低く唸るように呟いた。
「…時任一族の能力は、
自分以外の、時間を止める事が出来る」
自分以外の、時を止める。
話が壮大すぎて頭が付いていかない。それでも私は懸命に、あれこれ試行を重ねる。
時を止めるという事は、もしかして今まで瞬間移動のように見えていたあの場面は…
敵、空間、それらの時を止めて。自分だけは静止した世界を移動していた?
だから時間が再度動かされた時、周りの人間には、彼がまるで瞬間移動したように見えたのだろうか…?
「…ほんと、チート級の能力だよね」